ハンセン病医療過誤訴訟
「人から変な顔、お化けと言われ、落ち込みます。私も女です」。国立ハンセン病療養所「多磨全生園」(東京都東村山市)を退所した元患者の女性(65)は法廷で、積年の思いを切々と訴えた。十九日、東京地裁で開かれた医療過誤訴訟の第一回口頭弁論。女性の訴えは隔離の一方で、治療がおざなりにされた元患者たちの思いも代弁した。
女性は全生園で最適な治療が受けられずに後遺症が残ったなどとして、国に五千万円の損害賠償を求めている。
女性は後遺症で曲がったままの指で陳述書を開き、つらかった日々を振り返った。
「三十年ほど前、静岡の療養所を退所したときに残っていた手足の感覚は全生園で治療を受けているうちに悪くなり、主治医に薬が効かないことを話しても、取り合ってもらえなかった」
女性は一九五三年に十五歳でハンセン病と診断された。鹿児島と静岡の療養所で治療後、七〇年から全生園に通院したが症状はどんどん悪くなった。
八一年には、世界保健機関(WHO)が多剤併用療法を提唱していたが、主治医は単剤治療を続けるばかりだった。
「幸い主治医を変えてもらい、目や命は救われたが、顔はみにくく、身体は不自由になった。鏡を見ることもできず、訪ねて来た昔の知人は私を見ても私だと気づかなかった」
「私も女。おしゃれも好きだったが、今では髪も抜け、パーマもかけられず、化粧もできない」。女性が涙ながらに訴えると、傍聴席を埋めた元患者や支援者からおえつが漏れた。
「この裁判は私だけの裁判ではない。入所者も治療に通う退所者も、療養所に対し『おかしいことはおかしい』と言えるよう、安心して医療を受けられる体制ができることを強く希望します」。陳述を終えると、女性は不自由な足で立ち上がり、裁判長に深々と一礼。この日の法廷で「治療は正当だった」と争う姿勢を示した国側代理人席にも頭を下げた。
from http://www.tokyo-np.co.jp/
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