職場におけるメール送信の自由
アメリカでカリフォルニア州最高裁判所で、6/30に、ひとつの判決が下された。(判決文はここで参照可能。)
また、EFFでは、この裁判の特集ページも設けられている。→ここからどうぞ!
Hamidi氏側のサイトはこちら
・EEFの「法廷助言者の摘要書(Amicus brief)」
インテル社の敗訴である。
Hamidi氏側の勝利宣言はこちら。
Wired Newsによれば、事件の概要は以下のとおりである:
ハミディ被告はインテル社を解雇された後、不満を表明するために、一度に最高3万5000人の同社従業員を対象として電子メール送付キャンペーンを行なった。カリフォルニア州高等裁判所は先日、このハミディ被告に不利となる決定を下した。ハミディ被告の行なった電子メールの大量送付は、財産の侵害に当たるというのだ。3名の裁判官が、2対1で決定した。(2001年12月15日 2:00am PST)
ハミディ氏はインテル社に15年間勤務したが、労災補償をめぐってもめた後、1995年に解雇された。イランからの移民であるハミディ氏は、元同僚たちに送付したメールおよび同氏自身のウェブサイトで、人種、年齢、医学的障害を理由にインテル社から差別を受けたと主張している。
ハミディ氏は、自分が送ったメールは教育目的だったと主張した。これに対してインテル社は、受信者が同氏の長文メールを勤務時間中に読んだり、社内のITチームがメールを阻止しようと緊急対応した(結局失敗した)りしたせいで、従業員の生産性が落ちたと主張した。
まるで巨人と闘っているようにも思えるハミディ氏を支援しようと、さまざまな言論の自由擁護派が集まった。その中には、電子フロンティア財団(EFF)、米市民的自由連盟(ACLU)、ハーバード大学の『インターネットと社会のためのバークマン・センター』などの専門家も含まれている。(2003年3月14日 2:00am PT)
同僚に電子メールを送ることは、たとえそのメールの内容が会社に対して批判的であっても、侵害行為とは見なされないという裁定が、カリフォルニア州最高裁判所で6月30日(米国時間)に下された。
米インテル社に対して不満を抱く元社員、クルーシュ・ケニス・ハミディ氏が元同僚に電子メールを送ることを禁じた州地方裁判所と高等裁判所の判断に対し、カリフォルニア州最高裁判所はこの判断を覆すことを4対3で支持した。言論の自由の擁護派は今回の裁定を称賛している。
州最高裁判所は、ハミディ氏の電子メールはインテル社のサーバーを実際に混乱させたわけではないので侵害にはあたらないとして、高等裁判所の判断を退けた。州最高裁判所は過半数の意見として、「ハミディ氏は、社員と通信するという本来の目的のために電子メール・システムを利用したにすぎない」と述べた。
最高裁はまた、次のように述べている。「システムは当初の目的どおりの役目を果たし、物理的または機能的な障害や混乱を招くことなくメッセージを伝送した。このような時折の送信を、インテル社のコンピューター・システムの質や価値に損害を与えると合理的に見なすことは不可能だ」
ハミディ氏の弁護団と支持者は、下級裁判所の判断がそのまま認められれば、ウェブページへのハイパーリンクを実行したり、受信者が求めていない電子メールを1通送信したりするだけでも訴えられかねない事態になる、と懸念していた。
「裁判所は、インターネットのネットワークとしての機能を損なうおそれのある新しいルールを作ろうという誘いをきっぱり断った。原告が私有財産を侵害されたと主張したければ、通信機器が損害を受けた証拠が必要だ」と、ハミディ氏の弁護士の1人、グレゴリー・ラストウカ氏は語る。
「ハミディ氏が時折送信してくるメッセージを受信してインテル社が被るコンピューターの機能的負荷や、個々の受信者の時間的損失は、増える一方の宣伝メールの洪水によってインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)やその顧客が被る負担や出費とは比較にならない」とカリフォルニア州最高裁は述べている。
州最高裁判所はまた、インテル社が、電子メールによって職場が混乱し、生産性が落ちたと主張してハミディ氏の行動を阻止することはできないし、「社員の時間という面で財産の権利を主張する」こともできないと述べた。
だが、[宗教・言論・集会・請願などの自由に干渉することを禁ずる]合衆国憲法修正第1条によって、インテル社はハミディ氏の電子メールを社員が受信するのを妨げてはならない、という判断は示さなかった。(2003年6月30日 2:26pm PT)
日本の職場におけるネット関連については、プライム・ローというサイトにまとめられている。ただ、情報がやや古いといった点もある。そのサイトには「職場における電子メールとプライバシー」というコーナーもある。
また、ネット・情報関連の判例をまとめたページとして「情報ネットワーク関連判例」というすばらしいサイトもある。
日本の職場でのメールに関する判例としては、F社Z事業部事件(東京地判平13.12.3 労判826号76頁、日経クイック情報事件(東京地判平14.2.26労判825号50頁)がある。
F社事件については、藤内和公 「会社内の私用電子メールに対する使用者による監視の可否−F社Z事業部事件・日経クイック情報事件」 法律時報2003/5、
永野仁美 「私的メールの調査に関するルールが存在しない状況下でメールの閲読が許容される条件——F社Z事業部(電子メール)事件——東京地判平成13・12・3」 ジュリスト2003/4
がある。
両者の判例評釈として労判827-29に砂押以久子 「従業員の電子メール私的利用をめぐる法的問題」。
労判の831-96にフランスの判例紹介として、山崎文夫 「業務用パソコンの指摘しようとそのチェックの要件」があった。
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