2004/05/16

国民年金未納問題と「2年間」

連日国民年金の未納者の問題が、ニュースに表れ、そこで、何年間未納だったとか、気づいて2年分はさかのぼって支払ったが、それ以上は、時効のために納められなかったと出てくる。
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(横浜)市長就任時、市長の個人事務所が未納に気付き、過去にさかのぼって1年11か月分(約30万円)を納付したが、6年10か月間、約100万円は未納。
中川経済産業相(50) 1983年12月の議員当選以降。2002年以降分を今年4月に納付
石破防衛長官(47) 6か月。ほかに2002年9月以降分を今年4月に納付
峰崎直樹参院議員(59) 11年5か月。うち2年分を今年4月に納付
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政治家個人の政治責任をいろいろと論議する必要もあるだろう。しかし、そこで、ちょっと待てよと思った。
時効である。消滅時効。

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第百二条
3  保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び死亡一時金を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。
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根拠条文はこれである。民法総則の消滅時効の例である。民法をやったことがある人ならばわかるかもしれないが、時効は当事者の一方が時効だと主張することによってはじめて効力が生じる。それを時効の援用という。そのくらいは、私が憲法専門だろうとなんとなく覚えている。一応民法総則は必修だったので。
他の例、たとえば、口座などは、10年で時効になるが、銀行の側でそれを援用しなければ、口座は存続する。援用したということは聞いたことがない。

そこで考えるのだが、今回、各政治家は「全額払いたかったのだけど、時効によって2年しか払うことができなかった」のである。少なくとも名目上はそうであり、現時点での実務はそうなっているようである。
つまりは、年金を納める側ではなく、納められる側、社会保険庁サイドで時効を主張しているのである。
もちろん、法的にはなんらの問題がない。
しかし、大きな疑問が残る。
年金を運営する側は、受け取りたくないのだろうか?
納められなかった者は、その期間に応じて、支払われる年金の額が減ることになる。年金を支払う額が少なくてすむから、援用したほうが得であるという考えのようである。
時効だから、ただちに、さかのぼって2年を超えた分は納められないのではない。社会保険庁の側が、時効を主張することによって、支払ってもらわないことを選択できる権利を行使しているのである。

それとも、この2年は除斥期間であるということなのか?
その点をクリアにしてくれる説明はないものか。

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